国会図書館で、昔の『科学朝日』を読んでいる際に、
『科学朝日 1950年6月号』に、『空飛ぶ円盤の正体・・・科学者が答える推理と設計』という記事を見付けました。(下に記事のコピーを添付します。)
アメリカ人のケネス・アーノルド氏が世界で初めて「空飛ぶ円盤」を目撃したのが、1947年6月24日であるから、この記事は、それからちょうど3年目に書かれたことになります。
記事によると、当時、世界中で「空飛ぶ円盤」が話題になっていたらしいです。
この記事は、「空飛ぶ円盤」の正体について、日本の科学者たちが真面目に推論したものです。
以下に、要約を記します。
浅田常三郎(阪大教授):
ヘリコプター、流星、渡り鳥、航空機からの落下物、気象観測用の気球、他を見たものが、群集心理によって、火星からの探検船とかの大きな噂になったもの。
山本一清(田上天文台長):
もし他の天体からの到来物ならば、金星、火星、小遊星を考えなければならない。
金星は、今は恐竜時代だから、そんな生物がいるとは思えない。
火星は地球より進んだ世界だから、人類より高等な生物がいるかもしれない。しかしこうした進んだ生物が地球へ円盤などを送ってくるよりも、何らかの通信方法によって地球人と交渉するはずではないか。
藤波重次(京大助教授):
他の遊星に人類に匹敵する高等生物がいるとすれば、火星の他は無いが、火星にそれがいるとは思えないので、空飛ぶ円盤が火星から来たとは信じられない。
竹内為信(元川西航空機技師):
空飛ぶ円盤には2種類あって、一つは他の遊星から飛ばしたもの、もう一つは、アメリカ海軍の実験機と考えてよいのではないか。
西脇仁一(東大教授):
空想だが、円盤は火星から平和の女神として飛んできて、「地球人よ、みにくい戦争を起こさぬように」と囁いているのかも知れない。
村山定男(科学博物館勤務):
空飛ぶ円盤の一部は流星と思われる。アメリカは広いから流星が見えるチャンスも多いわけだ。
山本一清(前出):
私の結論は、金星を白昼に見て騒いでいるのだということである。
村山定男(前出):
金星は動かないものだから、金星と断定するのはどうだろうか。
谷一郎(東大教授):
空飛ぶ円盤は、猛烈な速度で射出してつくられた人工衛星だと面白い。
疋田遼太郎(運輸技研・技官):
長い鎖を付けて回転しながら飛ぶ高射砲弾ならば、見る場所によっては円盤に見える。
竹内為信(前出):
私は、空飛ぶ円盤は米海軍が極秘に研究している超大型機の縮尺模型を、無人操縦で飛ばして予備実験しているものと想像したい。
大築志夫(清水建設技師):
円形の固定翼をもった無尾翼・無胴体の全翼機であろう。あるいは、後退角の大きい無尾翼機かも知れない。
谷一郎(前出):
パンケーキ型戦闘機の発達した形と考えるのが最も自然だ。
西脇仁一(前出):
どんな動力機関が使われるだろうか。ジェット機関だとすると、ヘリコプターの翼端にジェット機関を用いると、円盤が飛んでいるように見えるかもしれない。
ロケットも考えられるが、作動時間が短く、せいぜい数分しか飛べないだろう。
浅田常三郎(前出):
火星への宇宙旅行にはロケット動力だけが必要だから、円盤のような形は常識的ではない。
現在のところ、月までロケットで行って、また帰ってくるというのはまず実現の可能性はあるまい。
以上のような科学者たちの意見が掲載され、最後に、「わたしはこう設計する」として、伏見康治博士(阪大教授)等が設計図を書いています。
私が面白いと思ったのは、1950年当時では、金星は恐竜時代と考えられていたこと、大学教授でも、ロケットで月まで行って帰ってくることは不可能と考えていたということです。いずれも現在では否定されています。
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