2012年8月24日(金)と8月25日(土)の二日間、第4回リカバリー全国フォーラムに参加して来ました。
場所は、東京の池袋にある帝京平成大学でした。
1.8月24日(金)の内容
午前9時半の開場と同時に、私は、ほぼ一番乗りで入場しました。
そのときもらった封筒の中に、「IPSを学ぶ ストレングスモデルに基づく個別就労支援の進め方」というDVD発売のチラシが入っていましたが、このDVDは、中島映像教材出版という会社が、私の通っている就労支援所に取材に来て作った作品で、私の姿も少し映っています。ですから、帰宅してすぐに購入申し込みをしました。
午前中は、NPO法人 地域精神保健福祉機構 COMHBO(コンボ)の発行している雑誌「こころの元気+」の表紙に写真が乗った人々によるトークライブでした。
司会をしたのが東京学芸大学准教授の福井里江先生という美人の女性で、しかもこの美人先生の出身高校が私の出身高校と同じなので、何となく嬉しく感じました。
この雑誌の表紙の写真は、全て精神障害を患う当事者の方々です。
雑誌を作るとき、どういう表紙にするか議論がなされたそうですが、当事者を表紙モデルにするとアイデアが出たのは画期的なことだったと、COMHBO(コンボ)の方がおっしゃっていました。
表紙のモデルとなる精神障害者は、募集して応募された方の中から選ばれるそうです。
表紙写真の撮影は東京の青山で行われるとのことです。最初はCOMHBO(コンボ)のある千葉県市川市で撮影することを考えたそうですが、「青山で撮影した」と言えばカッコよく聞こえるし、モデルの本人も満足するだろうとのことで、青山のスタジオが撮影現場になったそうです。
いろいろな人に、「表紙の写真の人は病気が軽い人でしょう?」と言われるそうですが、そんなことはないとCOMHBO(コンボ)の人がおっしゃっていました。
トークライブが終わった後、出演者への質疑応答や感想が述べられました。
会場からの質問で、
「家族療法で自分をビデオに撮っている。自分をビデオや写真に撮るのは、自分を見ること。気に入ったドクターやナースと当事者が一緒に写真を撮ったらどうか」、という提案がありました。
それに対して、COMHBO(コンボ)の人が、「以前、医者と写真を撮るという企画があった。」と回答しました。
また、出演者の当事者の方が、
「今まで受診した医者全員と集合写真を撮りたい。」
と意見を述べられました。
出演者がこれからの希望を述べられましたが;
「死ぬまで生きていたい。」
とか、
「雑誌『こころの元気+』が書店販売されるようになって欲しい。」
などという意見を出されました。
「自分の居場所はどこか。」という問いかけに対して;
「家庭が居場所」
とか、
「自分が自分の居場所」
とか、
「妻が待っている家庭が自分の居場所」
という回答が出ました。
昼休みを経て、午後から、
「アメリカにおけるピア活動について~その発展と将来への可能性~」と題して、WRAPで有名なコープランドセンター事務局長のマシュー・フェデュリーチ氏による講演がありました。
そして、15:15~17:45まで、11種類の分科会が行われました。
私は、「分科会5『IPS(個別就労支援とサポートモデル) ~働くことのストレス・働けないでいることのストレス~』」に出席しました。
私が、分科会5を選んだ理由は、講演者の一人の香田真希子先生(目白大学)を知っていたことと、私の通っている就労支援所のスタッフの方が2人講演をなさったことと、私が毎月行っているSlow WRAP Classという所でファシリテーターをなさっている方が講演をなさるからです。
香田真希子先生の講演では、IPSを使用した方が、そうでないよりも雇用率が高いことが分かりました。また、IPSの概括的な説明をなされていろいろ知見が得られました。
他には、就労支援所のスタッフの方々が、実際にIPSを使って仕事をするにあたってのいろいろな知見を示して下さいました。
最後に、WRAPのファシリテーターの方による、WRAPの作成をしましたが、余りにも時間が少なく、受講者の得るものは少なかったのではないかと思いました。WRAPについては、8月25日(土)に、分科会12で「WRAP」を詳しく学習する場があったから、そちらの方が充実した内容だったのではないかと思いました。
分科会の終わりの方で、質疑応答の時間がありましたので、私は2人の講演者に質問をぶつけましたが、回答を十分出来る時間が少なかったので、後日メールにて回答いただけるとのことでしたので、私の名刺を渡して来ました。
分科会の終了後に、「情報交換/交歓会」が行われましたので出席しましたが、私の知っている人が一人も見つからず、他の人たちとも交流が上手く出来なかったので、早めに帰宅しました。
このようにして、1日目が終わりました。
2.8月25日(土)の内容
2日目は、午前中に、
シンポジウム「これから10年のビジョン 精神保健福祉医療領域の社会運動とリカバリーフォーラム」が行われました。
5人の講演者が、今後の10年での精神保健福祉の展望を語りました。
(1)磯田重行氏(福岡市 地域活動支援センター ぷらっと)
「ぷらっと」でのピアスタッフの仕事についてご説明されました。
磯田氏を含め、ピアスタッフには精神障害者が多いようです。
「ぷらっと」では、「WRAP」や「IPS(Intentional Peer Support)」についても利用者に教えているとのことでした。
(2)岡田久実子氏(さいたま市精神障がい者もくせい家族会副会長)
「これからの『家族による家族支援』を考える」と題して講演なさいました。
COMHBO(コンボ)からの「家族による家族学習会プログラム」についてや、
全家連(全国精神障害者家族会連合会)についてのお話しがありました。
家族学習会に参加した当事者が元気になったら、次年度の担当者になるとの事でした。
多くの人から、「当事者を支援すれば、家族の支援はいらないのではないか。」といわれるそうですが、そうではないとの事。
あらゆるスティグマからの解放が必要。
「家族=当事者」という認識の広がりが必要。
家族自身のリカバリーのための支援の確立が必要。
家族学習会の広がりによって;
・家族が楽な気持ちになること
・専門家との関係の対等化
・新しいネットワークの構築
の実現が出来るとおっしゃっていました。
(3)伊藤順一郎先生(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)
「根拠にもとづく実践プログラム(EBP)のこれからの10年」をお話しになられました。主にアメリカの事情についてのお話しでした。
(4)高橋清久(財団法人 精神・神経科学振興財団)
「アンチスティグマ活動のこれから」についての講演でした。
このシンポジウムの中で、一番内容が良かった講演でした。
朝日新聞の精神障害者雇用義務化の記事について、雑誌「プレジデント」の編集長が、2012年7月16日号の編集後記「編集長から」に;
統合失調症という「幻覚を見て、何を言っているか分からない人と一緒にどうやって仕事をするのでしょう」と書いたことが問題視された事件について、
高橋清久氏は、「これはアンチスティグマの良いチャンスだ。」と思い、次の二つの行動をとったとのことでした。
・新聞社に訴え記事で大きく取り上げてもらう。
・元気な障害者のいる施設に丁重に招待した。
そうしたら、「プレジデント」の編集長はその招待に応じてくれ、障害者就労支援施設を高橋氏と一緒に見学してくれただけでなく、
障害者の経営するレストランで、高橋氏と1時間くらい歓談してくれたそうです。
このようなアンチスティグマ活動のやり方は、大変スマートで素晴らしいと思いました。
スティグマを抱いている人たちに対しては、元気で危険の全く無い精神障害者が多くいることを示すのが重要ではないでしょうか。
(5)大島巌氏(日本社会事業大学)
「NPOコンボのこれから10年ビジョンとリカバリーフォーラム」と題して講演なされました。
学校に精神保健福祉教育を取り入れるための諸活動が一番難しいとの事でした。今のところ、リカバリー全国フォーラムが一番重要な場であるとの事です。
コンボのこれからの10年
・コンボの分科会活動化
・リカバリー全国フォーラムとの連携
・ピアサポートサービスの発展に貢献する
を考えているそうです。
シンポジウムの最後に質疑応答があったので、私は思い切って質問をしてみました。
私の質問は、「ぷらっと」の磯田重行氏に対するもので;
「福岡といえば、久留米のNPO法人「WRAP研究会」が有名だが、「ぷらっと」の活動と、「WRAP研究会」は関係あるのですか?」
というものでした。
それに対して、磯田氏は、「自分自身が『WRAP研究会』の理事をしていて、福岡市から久留米に通っている。」と答えて下さいました。
何でも質問してみるものだと思いました。
その他;
「発達障害を個性と捉えて、それを強みとして雇用に結び付ける方法を模索したい。そういう事をやるのを提案したい。」
という意見も出ました。
最後の方で、高橋清久氏が、「精神医療の状況はこの10年で大きく変わった。これからの10年でもっと変わるだろう。」とおっしゃったのが印象的でした。
昼休みを経て、午後から、11種類の分科会が行われました。
私は、「分科会14 働く仲間と語り合おう ~働くためのアイデア集~」に参加しました。
私が、「分科会14」に参加した理由は、この分科会が私の通う障害者就労支援所のスタッフと卒業生によって企画・実施されているからです。
「分科会14」は、多くのグループに分かれ、各グループで、仕事に関する6つの見地から自分の体験や意見を出し合って、最後に全体発表をして、働くために役立つアイデアを共有しようというものでした。
私は、私の班の発表者に立候補して、私の班でまとめたことを発表しました。
以下が、私の発表です;
(1)仕事でつまづいたところ
・日報に過激なことを書いて怒られた。
・女性の上司の携帯電話に私的なメールを出してしまった。
・職場の病院で精神病患者に対する看護師たちの対応が悪いので、それを見て調子を崩した。
・仕事に関するつまずき。
(2)今の仕事の満足度(%)は?
・多くの人が100%と答えたが、70%、60%と答えた人もいた。
(3)職場に相談相手はいますか
・人事総務部長
・障害者就職サポートセンター「ビルド」の所長
・大島みどりさん
・会社の職員
・いない。
(4)働き始めて変わったこと
・経済力が付いた
・病気の症状が改善した
・社員の女性に恋をした。
(5)働く上で配慮してほしいことは?
・リスパダール等の薬を飲んだときに、20~30分休憩させて欲しい。
・相談窓口を置いて欲しい。
・てんかんの発作が起きたときに、適切に対応して欲しい。
(6)体調管理のためにやっていること
・睡眠管理(iPhoneのアプリ「おはようパンダ」の使用等)
・食事時間管理
以上を発表しましたが、他の班もそれぞれ独自の発表をして、いろいろな知見を得られました。
分科会が終わった後、「クロージング」が行われました。
講堂で、近くの人たちと小さな集団になって、出席した分科会での情報を交換したり、「これからの10年」の精神障害者の状況について意見を交わしました。
私は、今後10年間で、精神障害の知識を義務教育にすれば良いのではという意見を出しました。
「クロージング」の最後に、出席者の集合写真を撮りました。
私は、最前列のカメラのすぐ前に陣取っていましたので、確実に写真に写っているはずです。この写真がどこで使われるのか興味があります。
このようにして、リカバリー全国フォーラム2012 が終了しました。
このフォーラムでお世話になったスタッフの方々に、お礼のメールを出しておきました。
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小林博 (日曜日, 02 9月 2012 10:25)
リカバリー全国フォーラムの詳細な参加レポートをありがとうございます。
特に、月刊プレジデント事件の後日談を今日意味深く読みました。こうした、地道なアンチスティグマ運動の大切さを知りました。
kishilibro (月曜日, 03 9月 2012 03:42)
>小林様。
コメントありがとうございました。
「プレジデント」編集長も、何とか理解をして下さったようで嬉しく思います。
きちんと社会生活を送れる精神障害者が多くいることを、機会あれば人々に示していくのが必要だと思いました。